お気に入りの中華屋でラーメンをすすっていたら、隣の席にいた女性がキレながら泣き出した。向かいに座る男性は、女性の主張にじっと耳を傾けていた。
女性は外見年齢40代。話から察するに「派遣社員で入社したが希望していた職種に就けず、職場のイジメに耐えながらキャリアアップを目指して頑張っていたが、今月で辞めることになった(派遣切りなのか自己都合なのかは定かではない)。自分の仕事ぶりが評価されていなかったことが悔しいし、退職によって担当業務を誰かに任せなければいけず、その人たちの仕事量を増やしてしまったことに罪悪感を感じている」らしい。男性は白髪交じりの50代くらいで、穏やかそうな印象。従業員間でトラブルがあった際は、クッション役として重宝されてそうな雰囲気だった。
女性は、先日の私と似たような状況である。不本意な退職で一番苦しいのは本人だ。その気持ちはよーくわかった。
彼女はきっと能力が高く完璧主義で、自分の仕事ぶりに絶対の自信があって、プライドも高いのだろう。「事務じゃなく専門職に就いて、もっとスキルアップしたかった」と、人目をはばからずワンワン泣きながら訴える様子を見て感じた。
男性は相槌を打ちながら、時々同情を口にする。年齢は女性より上と見たが、それほど重要なポストにいるわけではなさそうだ。事実、平日夜にわざわざ部下の愚痴を聞くために小ぢんまりとしたこの店でディナーに付き合ってるし、男性に解決できる能力があれば2人ともここにはいなかっただろう。
ふと「この女性に地位と権力を与えたら、お局様になるんじゃないか?」との考えが脳裏をよぎった。素養はある、あとは条件と環境が整えばいい。人を指導できる立場、気が弱そうな同僚(できればマウンティングしやすい女性)、安定した雇用契約=正社員、ゴリ押しや面倒事の対処が苦手な管理陣…。
経営者側の視点から考えると、お局になるリスクの高い人間は振る舞い1つが命取りになる派遣社員として雇い、緊張感を持たせながら働かせていた方が就労環境をクリーンに保てて生産性も向上するんじゃないだろうか。被害者だって最小限に減らせるし。
だとすれば、極端な話をすると女性全員を非正規雇用で様子見し、大丈夫そうな人だけを正社員に上げる方法が手っ取り早い…が、このご時世にそんなことしたら男女共同参画社会基本法に反する。書いている本人も暴論だとわかっているし、義務教育でも学ぶ法律をシカトできるほど、今どきの企業は肝が据わってないだろう。
以前、何かで目にした野球監督のインタビューで「人間性と技術だったら、人間性が優れている方にオファーする。技術は練習すれば身に付くが、人間性を変えるのは難しいから」みたいなことを語っていた。一度お局になった人間を救うのは難しい。
彼女が今後、新職場に根を下ろして多方面から疎まれるクソBBAとして開花するか、退職する時に残念がられる人材となるか…他人事ながら興味を持ってしまった自分を反省し、丼ぶりに残っていたスープを飲み干した。
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