着るもの、特に肌に触れるものはこだわった方が良いというのは意識高い系の常識である。
これを童謡で歌っているのが「おにのパンツ」だ。複数バージョンがあり、鬼じゃなくてトラがパンツを履いているパターンもあるそうだが…四足動物が自主的に履く可能性は低いことに加えて、歌の認知・知名度の観点からも今回は鬼バージョンをベースに考える。また、この歌詞の「パンツ」は「ズボン」ではなく「下着」であるという前提で進める。オシャレな人ってズボンをパンツって言うよね。
おにのパンツはいいパンツ つよいぞ つよいぞ
トラのけがわでできている つよいぞ つよいぞ
5ねんはいてもやぶれない つよいぞ つよいぞ
10ねんはいてもやぶれない つよいぞ つよいぞ
はこう はこう おにのパンツ
はこう はこう おにのパンツ
あなたも わたしも あなたも わたしも
みんなではこう おにのパンツ
歌ではまず「鬼のパンツはいいパンツ、なぜならトラの毛皮でできていて強いから」という絶対的事実が出てくる。毛皮のパンツを好んで履くなんて、彼らはなんと高級嗜好であろうか。まるで叶姉妹のようである(叶姉妹ならトラの毛皮のパンツ持ってそうだよね)。
鬼たちはイオンで3枚500円で売られているパンツでは満足しないのだろう。毛皮のパンツの値段か想像つかないが、少なくともポリエステルの量産品レベルではないはずだ。素材は天然物の本革で、おそらくオーダーメイド…1枚あたりの金額は外資系営業マンの年収と同等かもしれない。数え慣れていない桁で右から左にゼロを数えるのが面倒臭い、あの感じである。
当然、良質なものだから耐久性も良い。歌詞によると最低でも5〜10年は物持ちするらしい。事実なら一般的な下着は1年前後が限界、という下着業界の常識を覆すトンデモない代物だ。まぁ、お値段がそれなりにするだろうからヘビーユースに耐えられる仕様にしてもらうのが妥当と言ったところか。
という業界騒然の技術とクオリティをサラッと紹介した上で、あとは「鬼のパンツを履こう」という啓蒙が繰り返される。「俺たちと同じパンツを履いて強くなろうぜ」と、特撮ドラマの合間に流れている男児向けパンツのCMのようなよくあるキャッチコピーが見え隠れしなくもない。
ここでふと気づく。「この歌の『鬼』とは、ツノが生えて金棒持っている地獄の住人だろうか?もしかすると何かの隠喩ではないか?」と。記事の冒頭で「肌に触れるものにこだわるのは意識高い系の常識」と話したが、鬼のパンツに対するこだわりを鑑みるとどこか通じるものがある。もしかして鬼=意識高い系を表している?確かに、彼らのストイックさ・こだわりは時に鬼のようである。
「鬼のパンツ」は1975年初出らしいが、この仮説が事実だとすれば意識高い系の出現は40年以上前から予見されていたことになる。JASRACでは作詞者不詳とのことらしいが…。ここから先は完璧に妄想だが、実は作詞者はタイムスリップか何かで現代を知り、意識高い系を「鬼」と表現したこの歌詞を制作して1975年に発表。そのことを知った「一般的な社会生活を送っていたら到底お目にかかれない強大な組織」によって、作詞者が消された…ので、不詳と処理されているかもしれない。
…私はとんでもない結論に接触しようとしている恐れがある。これ以上、鬼のパンツについて考察・言及するのはやめよう。
そういえば昨日は節分でしたね。