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毒親に悩まされた人が都知事になった結果

 かつて、こんなに悲しいノンフィクションがあっただろうか。

女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)

  • 作者:石井 妙子
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Kindle版
 

 東京都知事選前に出版された話題の本。ベストセラーを獲得したと聞き、Kindleでダウンロードして読んでみたらその理由に納得した。

 政治家になる前、カイロ大学に留学するまでの小池百合子東京都知事は現代風の言葉を使うと「毒親に悩まされた青春時代」だった。父は人に迷惑をかけまくり、問題だらけで社会的信頼が低い。母は一見味方のようで、小池氏の容姿をDisり「だからあなたはこうしなさい、こう生きていきなさい」と教えている。小池氏自身より遥かに容姿端麗な親族もいた。

 小池氏の心中は当然ながら本人にしか分からないが、数え切れないほどの辛い経験を乗り越えてきたのだろう……という事実は想像できる。

 両親のことを自身であまり語ったことがない様子だが、無理もない。自身の経験をドラマティックに脚色して語るのが好きな小池氏が、親をダシに支持・共感を得ようという発想に至れないほどに嫌悪していた人物だったからだろう。

 筆者は小池氏の異常や問題行動ばかりを強調しているが、彼女の人格を形成した環境にも目を向けてほしかった。助けてくれる大人はいなかったのか。「敵を作ってやっつけるのが得意」なのは、敵しかいない環境で育ってきたからではないか。もっと早くに、誰かが味方になって優しく接することができていたら、別な人生を歩んでいたことだろう。

 嘘つきだとしたら、それに騙されて都知事に選んだのは都民だ。私たちだ。先日、買収行為がバレて逮捕された政治家がいたが、小池氏周辺にそのような目も当てられないレベルのスキャンダラスな噂は聞こえてこない。かつて仙台市長・宮城県知事ゼネコン汚職ダブル逮捕事件があった宮城県民の私から見たら、人格に多少の問題はあれど激務の中で満期まで職務を全うできたことは本当に素晴らしいと思う。

 次の東京都知事選の結果はどうなるか分からないが、今はどうか小池氏のことを許してあげてくれないか。そんな気持ちになる一冊だった。