怪談の有名どころ「(番町)皿屋敷」。
器量のよい「お菊」という女性が、奉公先で家宝の皿を割ってしまい、旗本(=偉い人)の主人がキレて手打ちにしようと監禁した上に、中指を切断されてしまった……という話。
パワーハラスメントじゃないですか。
そんな資産的価値がある皿を奉公に来ている女性、言うなれば非正規雇用社員に管理させるなんて、どういう神経をしているんだ。そのことによって起こりうるリスクを想定していないし、その最悪の事態が実際に起こってしまった。経営者としてあるまじき愚行だ。監査が入った時にずさんな管理を指摘されても文句は言えないだろう。
にもかかわらず、全責任をお菊さんに押し付け、障害を残すほどの怪我を負わせるってブラック企業にもほどがありゃしませんか? どこのヤクザだよ。ヤクザでももうちょっと筋が通ったことをやるよ。
そして脱走したお菊さんは井戸に身投げしてしまい、後はご存知の通り夜な夜な皿を数える声が井戸から……。
死ぬほど逃げたいってヤバい職場だな。そうなる前に然るべきセーフティーネットを利用できていたら良かったのだが。江戸時代からこういう理不尽な労働環境下に置かれている女性労働者はいたんだな。
ふと、この話で某広告代理店元社員の高橋まつりさんの事件を思い出した。お菊さんと年齢近かったはず(お菊さんは24歳らしい)。
二人とも、成仏してくれているといいな。あるいは協力して、この世に蔓延るブラック企業をかたっぱしから呪ってくれてもいい。どうか魂だけは安らかに……。
ところでこの怪談には、お菊さんに惚れた家臣が言い寄るも振られたため、憂さ晴らしに皿を紛失した(と見せかけて隠したらしい)罪をお菊になすりつけ、殺して井戸に突き落とした……というバージョンもあるそうだ。
セクシャルハラスメントじゃないですか。
しかもパワーハラスメントのコンボじゃないですか。
何、もうこれ……あー、ひどいわー。
きっとあれだな、お菊さんが気を遣ってニコニコしてたのを好意と勘違いしたんだろうな。アホな中間管理職あるある。
で、いざモーションかけてみたらそうじゃなかった……ムキーッ!! 貶めて殺してやる!! って、めちゃくちゃじゃないか。彼女いない歴=年齢のモテない童貞みたいな思考してるな。
そんなアホの言うことを信じた主人もまた残念な人。従業員同士のトラブルは、本人たちのヒアリングに加えて同僚たちからの証言も確認して客観的判断をだな……あ、そういう小回りができないタイプの人か。
だとしたら外注でトラブル処理専門の業者を雇って……って、江戸時代にそういうコンサルティング系の職業の人いるのか?
いずれの話にせよ、主人の危機管理能力がなさすぎるのが問題だな。青山さんだっけ? 人の上に立つ器じゃないよアナタ。早めに事業承継して隠居することを勧める、強く。